油絵の具についての注意事項
油絵異は、その表現力、各種技法
の幅広さとともに、経年時の耐久性
が特長のひとつです。クサカベにお
きましても、他の絵異類とは際立っ
た耐久性を満足させるため、顔料の
厳選とビヒクル※1の研究を重ねて
まいりました。
耐久性を表示するにあたり、一般
的な光による変化を示す『耐光性』
と、絵異層としての強さを示す『堅
牢性』という2面に分けました。
また、描画面の性能を示す意味で
『透明性』と『乾燥性』および『混色制
限』を表示しました。
■耐光性について
油絵異は、さまざまな使われ方を
しますので、一定の性能を示すわけ
ではありません。
ここでは、チューブから絞り出さ
れた状態の絵異の性能を示しまし
た。
具体的には、0.5mmに塗られた絵
具層を乾燥した後、フェードメー
ター※2を使って一定時間光にさら
し、色の変化を色差計で計りまし
た。さらに、数字をそのまま蘇せ
ず、次の5段階に分類致しました。
★★★★★ほとんど変色しない色。
★★★★ 直射日光でわずかに変
色する色。
★★★ 通常の展示状態で変色
しない色。
★★ 経時的に変色する色
★ 目に見えて変色する色
■堅牢性について
堅牢性は、使われ方によって変化
する基準を設けにくい指標です。こ
こでは、経験的に亀裂、剥離、その他
問題が起こりやすさを5段階として
表示・分類しました。
☆☆☆☆☆信頼性がきわめて高い
色。
☆☆☆☆ 信頼性が高い色。
☆☆☆ 通常の使用で問題を起
こさない色。
☆☆ 経時的に劣化しやすい
色。
☆ 確実に崩壊する色。
■透明性について
油絵異の特長のひとつは、透明性
にあります。チューブから絞り出し
た絵具に、両用液をわずかに加える
と、たちまち透明性が高まります。
ここでは、チューブ内の絵具そのも
のの性質としての透明性を3段階で
示しました。
透明色は、グラッシ等の技法で用
いやすい絵異です。もちろん、半透
明色や不透明色という表示の絵具
でも、油を多く混ぜると、透明性が
高まります。
絵具の性格の目安としてご理解
ください。
■乾燥性について
油絵具は、水彩絵具のように水が
蒸発すると乾燥するといった単純
な機構ではありません。油絵異の油
は、空気中の酸素を取って酸化重合
という化学反応を起こしながら固
化していきます。
したがって、温度による影響が大
きく、夏と冬では油絵具の乾燥の早
さは2倍以上も違う場合がありま
す。また、厚く塗った場合には、表面
の酸素の多い部分では乾燥が早い
のですが、絵異の内部ではなかなか
乾かない状態になります。
ここでは、油絵異を0.2mmの厚さ
に塗り、25℃の部屋で指触乾燥する
のに要する平均日数を示しました。
■混色制限について
油絵具は、顔料粒子が油に包まれ
ているため、従来懸念されてきたほ
どには、顔料同士が化学反応による
変色の発生頻度は高いものではあ
りません。しかし、揮発性油を多く
使ったりした特別な条件下では、万
が一の変色がないとはいえません。
通常の使用レベルで、できるだけ
混色を避けたほうが良い絵具に制
限記号をつけました。預料中に鉛を
含む「Pb」表示の絵具と、遊離硫黄を
含む「S」表示の絵具との混色にはご
注意ください。
■有害性について
専門家用油絵具に使用される顔
料には、人体に有害の恐れのある物
質が含まれています。不注意に使用
しますと、体内に摂取され、さらに
長期間使用し続けると蓄積されて
障害を発生する恐れがあります。
「有害性あり」の表示のある絵具
を使用する場合には、チューブに表
示された警告文に従い、ご使用くだ
さい。
油絵具の顔料は、水に対する溶解
性がきわめて低くしかも油にくる
まれていることから、決して危険性
が高いとはいえませんが、使用に際
しては次のことを守ってください。
1.使用中に、喫煙、飲食をしないこ
と。
2.皮膚に付いたら洗うこと。
3.スプレーする時は保護マスクを
すること。
4.使用後は手を良く洗うこと。
5.子供の手の届かないところに保
管のこと。
■成分表示について
顔料の構成により「無機」「有機」
および「混成」の3種に分類しまし
た。この分類法は化学組成による慣
習的なものですが、傾向として次の
ように整理されます。
「無機」分類の絵具は、天然あるい
は合成の鉱物質から作られた顔料
で構成され、一般に耐光性、堅牢性
に優れ、落ち着いた発色をします。
「有機」分類の絵具は、染料と混同
されることもあるようですが、専門
家用の油絵具では、有機溶剤にに対
して堅牢な『有機顔料』を使用して
います。一般に着色力に優れ、鮮や
かな発色をします。「無機」系の絵具
に比べると、やや耐光性、堅牢性に
劣るのが普通です。しかし、最近で
はプライム系の絵具のように無機
系の絵異に匹敵するような有機顔
料もあります。
「混成」の絵具は、ホワイトをベー
スに有色無機顔料や有機顔料で調
色される中間色に多くあります。
顔料の組成は、カラーインデック
スネーム(C.l.Name)で表示し、日本
語の一般名を添えました。略号は以
下の通りです。
PV………PigmentViolet
PB………PigmentBIue
FG………PigmentGreen
PY‥……PigmentYellow
PR……PigmentRed
PBr……PigmentBrown
PBk………PigmentBlack
PW………PigmentWhite
例えば、C.l.ピグメント ブルー
28番のコバルトブルーは「PB 28」
と表示されます。
また、最近開発されたばかりの顔
料等は、カラーインデックスに含ま
れていないものもあります。「not
listed」と表示しました。
※1.ピヒクル:絵具を練り合わせる
とき、糊材としてはたらく成分・
預料と並んで2大成分のひとつ。
※2.フェードメーター:絵具面の光
に対する変化を見るために使う
人工的に強力な光を出す装置。
※3.ここに示しました技術情報は、
1996年7月1日現在のものです。
研究成果により改良が加えられ
ることがあります。